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外壁塗装で監督がいない間に起きる『見えない手抜き』7類型(現役職人が解説)

著者: 横井隆之

「終わってしまえば、もう確かめられない」——それが外壁塗装の手抜きの怖さ

外壁塗装の手抜きが厄介なのは、その多くが「塗り終わって乾いてしまうと、外から見ても分からなくなる」点にあります。塗膜は最終的に1枚の塗装面になり、その下で規定どおりの工程が踏まれたかどうかは、表面からは判別できません。

このことを、あるプロ職人が外壁塗装のQ&Aサイトで正直に語っています。その職人は、3回塗れば手のひらの感触でおおよそ見分けられるとしながらも、証拠を示せるかどうかは別だとして、こう述べています。

ただ感覚ですのでエビデンスを出すことができません。

つまり、経験を積んだ職人でさえ、完成後には「感覚では分かるが、証拠は出せない」のです。だからこそ、施主からもこんな相談が実際に寄せられます。

外壁塗装が終わったのですが、本当に3回塗りしているか確認する方法などありましたら教えて頂きたいです!

この記事では、監督が現場に張り付いていない間に起こりうる「見えない手抜き」を7つの類型に整理します。各類型について、①何が起きるか ②なぜ事後には検証できないか ③工事中なら残せる証跡は何か、の3点をセットで示します。監督の常駐は戸建ての外壁塗装では法的に不要で、来ないのはむしろ普通です(その法的な理由は別の記事で解説しています)。だからこそ大切なのは「常駐させること」ではなく、「契約どおりに施工された証跡」を工事中に残してもらうことです。

なお、これらの手抜きが「どのくらいの頻度で起きているか」を示す信頼できる統計は、現時点で存在しません。本記事は発生頻度を断定するものではなく、「起きたときに事後では見抜けない」という構造と、「工事中なら残せる証跡」を示すものです。数字の裏づけのない頻度の断定は、この記事では行いません。

類型1:塗り回数のごまかし(3回塗りが2回になる)

何が起きるか:外壁塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本ですが、中塗りか上塗りのどちらかを省いて2回で仕上げても、乾けば見た目はほとんど変わりません。塗膜が薄くなり、本来の耐用年数より早く劣化します。

なぜ事後に検証できないか:先ほどのプロ職人の言葉どおり、完成後は「感覚では分かっても証拠は出せない」領域です。塗膜の厚みを部分的に測定できても、「全体で何回塗ったか」を後から立証するのは困難です。

工事中なら残せる証跡:中塗りと上塗りで色を変えてもらうのが最も確実です。ある専門家も「同じ色の塗料を使用しては、1度塗りか2度塗りかの判断がつきません。色が同じだとベテランの職人でもどこかで塗り残しをしても気付かないほどです」と説明しています。契約前に「中塗りと上塗りの色を変えること」を条件にし、工程ごとの写真を残してもらいましょう。

類型2:下塗り(シーラー・プライマー)の省略や量の不足

何が起きるか:下塗りは塗料と外壁を密着させる接着剤の役割です。これを省いたり規定量より薄く塗ったりすると、数年で塗膜が剥がれます。上から中塗り・上塗りを重ねてしまえば、下塗りが十分だったかは外から見えません。

なぜ事後に検証できないか:完成後の塗装面からは、下に下塗りが規定量入っているかを判別できません。剥がれという形で不具合が出るのは、多くの場合、数年が経ってからです。

工事中なら残せる証跡:下塗りの工程写真(使用した缶と塗布中の様子)を残してもらうこと。下塗り材の確認方法は別の記事にまとめています

類型3:ケレン・下地処理の省略

何が起きるか:旧塗膜のはがれ・サビ・粉化(チョーキング)を落とす下地処理(ケレン)を省くと、上に塗った塗料の密着が悪くなります。表面をなでる程度で済ませても、塗ってしまえば分かりません。

なぜ事後に検証できないか:下地処理の丁寧さは塗膜の下に隠れます。完成後の面からは、どこまでケレンしたかを再現・確認できません。

工事中なら残せる証跡:高圧洗浄・ケレンを終えて塗装に入る前の「素地の状態」の写真を、工程ごとに残してもらうこと。

類型4:高圧洗浄の時間短縮・省略

何が起きるか:塗装前の高圧洗浄で汚れや旧塗膜の粉を落とし切らないと、塗料が汚れの上に乗る形になり密着不良を起こします。洗浄は塗装の前日までに終わることが多く、施主が見ていない時間帯に短縮されやすい工程です。

なぜ事後に検証できないか:洗浄後は乾き、塗装で覆われるため、どれだけ丁寧に洗ったかは後から分かりません。

工事中なら残せる証跡:洗浄前後の写真と、洗浄に要した日程の記録を残してもらうこと。

類型5:工程間の乾燥時間を守らない(1日で塗り重ねる)

何が起きるか:塗料には塗り重ねまでに必要な乾燥時間がメーカー仕様で定められています。これを守らずに1日で塗り重ねると、塗膜内部が乾ききらないまま重なり、密着不良や早期劣化の原因になります。

なぜ事後に検証できないか:乾燥時間を守ったかどうかは、完成した塗膜からは判別できません。工期が短縮された事実だけが残ります。

工事中なら残せる証跡:各工程の実施日を記録に残してもらうこと。ある塗装店は乾燥時間について「指定塗膜乾燥時間を厳守するため1日1工程の作業になります。」「但し当店では下塗り~上塗りまでを1日で終えるという事は絶対にありません。」と明言しています。工程が1日で複数進んでいないか、日付で確認できます。

類型6:隠れる付帯部の塗り残し・簡略化(軒天・破風・雨樋・雨戸・水切り)

何が起きるか:軒天(軒の裏)、破風、雨樋、雨戸、水切りといった付帯部は、地上や道路から見えにくく、塗り残しや1回塗りで済まされやすい部分です。

なぜ事後に検証できないか:高所や裏側は施主が普段目にせず、足場が外れた後は近づいて確認することも難しくなります。

工事中なら残せる証跡:足場があるうちに、付帯部それぞれの塗装後の写真を残してもらうこと。可能なら足場の解体前に、施主自身が上って確認すること。

類型7:コーキング(シーリング)の打ち替えを打ち増しで済ませる

何が起きるか:目地やサッシ周りの古いシーリングを撤去して新しく入れ直す「打ち替え」を、古い上から重ねる「打ち増し」に変えると、手間と材料が減ります。仕上がりの見た目は似ています。

なぜ事後に検証できないか:打ち替えか打ち増しかは、施工中に「古いシーリングを撤去した瞬間」を見ていないと、完成後の表面からは判別が難しくなります。

工事中なら残せる証跡:撤去後(古いシーリングを取り除いた状態)と充填後の写真を、目地ごとに残してもらうこと。契約書に「打ち替え」か「打ち増し」かを明記してもらうこと。

なお、「塗料をシンナーで薄めすぎる(希釈超過)」という手抜きもありますが、これは塗料の缶数と塗る面積から見抜くという別の切り口になるため、本記事では扱いません。詳しくは塗料の空き缶を確認する記事の「二重の誘惑」の節で解説しています。

「工程を飛ばした」ように見えて、正当なケースもあります

ここまで手抜きの類型を挙げてきましたが、工程が短く見えても正当な場合があることも、公平にお伝えします。

例えば、乾燥時間はメーカー仕様の範囲内であれば、気温の高い日には短くなります。仕様書が許す範囲で1日に複数工程を進めること自体は、必ずしも手抜きではありません。

高圧洗浄の所要時間も、汚れの程度で変わります。汚れの少ない外壁で洗浄時間が短いこと自体は問題ではありません。

下塗りについても、下地の種類や状態によって最適な塗料や回数は変わります。「下塗りが1回だった=手抜き」とは限りません。

だからこそ大切なのは、「工程の見た目の長さ」で判断することではなく、「なぜその工程・その時間で問題ないのか」を業者に説明してもらい、その説明と工程写真が食い違っていないかを確認することです。

求めるべきは「常駐」ではなく「契約どおり施工された証跡」

監督が現場に毎日いること(常駐)は、戸建ての外壁塗装では法的に義務づけられておらず、来ないのはむしろ普通です(詳しくはなぜ監督が毎日来ないのかを解説した記事をご覧ください)。

監督を常駐させるよう求めるより、現実的で効果があるのは、ここまで挙げた各工程の「証跡(工程ごとの写真と実施日の記録)」を、工事中に残してもらうことです。証跡は、監督がいてもいなくても残せます。そして、完成後には出せない「エビデンス」を唯一残せるタイミングが、工事中です。

「契約どおりに施工された証跡を出してください」——この一言を、契約前と着工前に業者へ伝えておくこと。それが、見えない手抜きに対して施主ができる、最も確実な備えです。

見えない手抜きの多くは、悪意より先に「工事にかけられる時間(人工)が足りない見積もり」から始まります。いまの見積もりで職人の作業日数が足りているかは、無料の人工充足度計算機で確かめられます。

https://penki-mikata.com/mitsumori/tools/ninku-sufficiency/

よくある質問

外壁塗装が終わった後から、見えない手抜きをされたかどうかを確認する方法はありますか?

完成後の塗装面からは、塗り回数や下塗りの量、乾燥時間を守ったかを立証するのは困難です。プロの職人でも「感覚では分かっても証拠は出せない」のが実情です。確実なのは、工事中に工程ごとの写真と各工程の実施日を残してもらうことです。完成後にできることは、保証書の内容確認と、不具合が出た際に工程写真と照らし合わせることに限られます。

現場監督が毎日来なければ、こうした手抜きは防げないのでしょうか?

監督の常駐は戸建ての外壁塗装では法的に不要で、来ないのは普通です。手抜きを防ぐ鍵は監督の常駐ではなく、工程ごとの証跡を残してもらうことです。証跡は監督がいてもいなくても残せます。

工事中に施主が残しておくべき証跡は、具体的に何ですか?

各工程(高圧洗浄・下地処理・下塗り・中塗り・上塗り・付帯部・シーリング)の作業前後の写真と、それぞれの実施日の記録です。中塗りと上塗りは色を変えてもらうと塗り回数が確認できます。契約書には「打ち替え」か「打ち増し」かなど、工程の内容を明記してもらいましょう。

この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 25著書 3

愛知県丹羽郡扶桑町でヨコイ塗装を経営。施工歴25年・250件超の施工実績を持つ外壁塗装の専門家。著書3冊(外壁塗装の品質公式・外壁塗装の不都合な真実・外壁塗装 工程別チェックポイント21)。独自理論「塗装方程式」の提唱者。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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