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販売店の「年間目玉セール」が消えた──塗料流通の最前線で起きていること【2026年5月】

カモイセール中止が意味するのは何か。塗料販売店レベルで進行している販促資源の崩壊を施工歴25年の職人が解説します。

著者: 横井隆之

「いつもこの時期にあるセールが、今年は告知が来ないんです」──2026年4月下旬、地域の塗装業者からこんな声が複数届くようになりました。塗料メーカーの値上げニュースが続く中で、施主の目には見えにくい「販売店レベル」で起きている変化があります。

塗料そのものの値上げは新聞・テレビでも報じられていますが、その手前にある「塗料販売店」が運営してきた年間恒例セール・販促イベントが2026年春に相次いで中止・縮小されています。これは何を意味するのか、施主は業者の説明をどう読むべきか。

この記事では、施工歴25年・施工件数250件超・著書3冊の職人視点で、塗料販売店レベルで進行している販促資源の崩壊を整理します。塗料値上げの全体動向は、塗料メーカー4社の値上げ率比較記事も併せてご覧ください。

はけ屋「カモイセール」中止が示すもの──販促資源の崩壊

塗装業者向け資材販売の老舗「はけ屋」は、毎年春にカモ井加工紙(マスキングテープ大手)の製品を集中販売する「カモイセール」を実施してきました。この2026年版が、4月時点で告知されないまま実質的に取りやめになっています。

はけ屋公式トップページには、2026年4月以降「中東情勢による受注・発送・価格変更にかかわるご案内」が常設掲載されています。これは一時的なバナーではなく、運営側が「当面は継続する」と判断した状況であることを示しています。

さらに2026年4月20日からは、Yahoo!ショッピング店で養生用品が「数量限定/一人1箱まで」という条件付きで販売再開されました。「販売再開」と「数量制限」が同時にアナウンスされるのは、業者向け流通として平常時にはほぼ見ない事象です。

「年間恒例の目玉セールが告知されない」「販売再開時に一人1箱制限が付く」──この2点は、塗料販売店レベルで「平時の販促体制」を維持できなくなっていることの直接的なシグナルと読めます。

★Y1: ヨコイ塗装の現場で見たカモイセール中止の意味(横井さん追記予定:例年の発注タイミング・取引販売店の対応・現場での養生資材手配への実影響)

なぜカモ井加工紙が止まったのか──原材料サプライチェーンの構造

カモ井加工紙(mtブランドで知られるマスキングテープ国内大手)は、2026年3月30日に「中東情勢悪化による納期への影響」を公式サイトで告知しました。塗装現場で使う養生用マスキングテープの供給が、上流原料段階で逼迫していることを示しています。

マスキングテープの粘着剤・基材は、上流原料として石油化学品(VAM=酢酸ビニルモノマー、スチレン系樹脂など)に依存します。これらは、三菱ケミカル・DICといった国内大手化学メーカーが供給する素材であり、ナフサ価格の高騰と中東情勢の影響を直接受ける構造にあります。

つまり「マスキングテープが入りにくい」のは、カモ井加工紙単体の問題ではなく、塗料本体の値上げと**同じ上流原料の逼迫**が、副資材レイヤーにも到達したことを意味します。塗料メーカーの値上げ率と並べて見ることで、業界全体の構造が見えてきます。

主要塗料メーカー4社(関西ペイント・日本ペイント・エスケー化研・大信ペイント)の値上げ率と適用時期は、塗料値上げメーカー比較2026で公表値ベースに整理しています。

塗料本体の値上げは「製品価格の改定」という形で施主に見える化されますが、副資材(マスキングテープ・養生シート・希釈剤・コーキング材など)の供給制約は、見積書の細目には現れにくい性質があります。施主側から確認しないと「材料が確保できているか」は見えない構造です。

「春のローラー祭り」は続いているのに、なぜ「カモイセール」だけが止まるのか

同じはけ屋の販促企画でも、「春のローラー祭り」「防水部4月の企画」は2026年も実施されています。一方で「カモイセール」は中止。これは販売店側が「販促資源を選別」していることを示します。

在庫が安定的に確保できる商材(ローラー類・防水材の一部)にはセールを継続し、上流原料が逼迫している商材(マスキングテープ等の副資材)はセールを取りやめる──これは販売店側の合理的な判断です。「全部止まっている」のではなく「**止まる商材と止まらない商材が分かれている**」ことが、今回の局面の特徴です。

施主の側から見ると、「業者は塗料は確保できる」と説明しても、「養生資材も確保できている」とは限らない、という二段階の確認が必要になります。塗料が届いても、マスキングテープがなければ養生工程が止まり、結果として工事全体が遅延します。

★Y2: 現場での養生資材の入手状況(横井さん追記予定:マスキングテープ・コロナマスカー・養生シートの仕入れ先での実感、代替調達の有無)

過去の危機(2008・2020・2021〜22)と何が違うのか

塗料業界は過去にも複数回の価格高騰・供給制約を経験してきました。2008年リーマンショック前後の原油急騰、2020年のコロナ禍による物流停止、2021〜22年のウッドショック・コンテナ不足。今回の2026年局面と過去を比較すると、決定的な違いがあります。

過去の危機の多くは「製品価格は上がるが、入手は可能」という構造でした。値上がり分を見積もりに乗せれば工事は進められた。一方で2026年の局面は、「価格上昇」と「供給制約」が**同時並行で発生**している点が異なります。販売店レベルの販促イベント中止は、後者──供給制約が販促体制を物理的に維持できないところまで来ている──の表れです。

もう一つの違いは、業者間の対応力の差が拡大している点です。在庫を多めに確保している業者・自社施工で材料管理ができる業者は当面の工事を回せますが、下請けに材料調達を委ねる業者は、在庫切れで工事が止まるリスクが現実化しています。

元請けと下請けで材料調達の独立性がどう違うかについては、外壁塗装の下請け構造、2026年の本当のリスクで詳しく整理しています。

政府の動き──経産省4月13日要請と「目詰まり」概念

塗料・副資材の供給制約について、政府も2026年4月以降に動いています。経済産業省は4月13日、製造産業局長名義で塗料メーカー・卸・小売に対して生産・出荷抑制をやめるよう要請を出しました。

翌4月14日の閣議後会見で、赤澤経産相は「シンナーの目詰まりは解消に向かう」と発言。原料(トルエン・キシレン)は前年並みの供給があるにもかかわらず、川中の卸が「5月以降の供給が読めない」として4月の出荷を絞っていたことが「目詰まり」の正体だ、という認識が政府から示されました。

一方、国土交通省の建設業法令遵守相談窓口には、4月13日の週末だけで約50件の相談が寄せられました。建設業者・施主双方から「契約後の値上げ」「材料未着での工程ストップ」に関する問い合わせが急増している実態を示しています。

政府が動いた事実は、施主にとって2つの意味があります。一つは「物理的な原料枯渇ではなく、市場心理による出荷抑制が主因」と政府が認識していること。もう一つは、「現場で実際に起きている材料未着・工事遅延は、相談窓口で正式に救済対象として扱われている」ことです。

★Y3: 経産省要請後の販売店現場の体感(横井さん追記予定:4月13日要請以降、仕入れ先の出荷状況に変化があったか・いつ頃から実感したか)

施主が業者に確認すべき5つの質問

販促イベント中止という販売店レベルの兆候を踏まえて、施主が業者から見積もりを取る・契約前に確認するときの質問を5つ整理します。

質問1: 「使用予定の塗料・養生資材の在庫は確保済みですか?それとも工事開始時点で発注しますか?」──在庫確保済みなら工程の遅延リスクが低く、発注待ちなら市場の変動を直接受けます。

質問2: 「見積書の有効期限は何日間ですか?」──通常2〜4週間程度ですが、2026年5月時点では業者によって短くなっている場合があります。短い有効期限は「市場が動いている」シグナルです。

質問3: 「工期中に材料費が変動した場合、追加費用の請求はありますか?」──エスカレーション条項(材料費変動条項)の有無を契約書面で確認します。「ない」と口頭で言われた場合も書面化を依頼してください。

質問4: 「材料調達は元請け(御社)が直接行いますか、それとも下請け業者が行いますか?」──下請けが調達する場合、元請けが在庫状況を把握していないケースがあります。

質問5: 「もし材料未着で工程が止まった場合、どのくらいの遅延を想定していますか?」──遅延想定を業者が即答できるかは、業者側のリスク管理力を測る指標になります。

値上げが「妥当な改定」か「便乗」かの見分け方は、見積書で見分ける便乗値上げチェックポイントで詳しく解説しています。

★Y4: 横井さん推奨の質問順序(横井さん追記予定:5つの質問のうち最初に聞くべきは?業者がはぐらかす典型回答パターン)

まとめ:販促イベント中止は「異常気象の前兆」

塗料販売店レベルの販促イベント中止は、施主から見ると小さな兆候に思えるかもしれません。しかし販売店は塗料メーカーと施工業者の中間に立つ実務レイヤーで、ここで販促体制が維持できなくなることは、業界全体の供給制約が「平時の運営」を超えた段階に入っていることのシグナルです。

異常気象に例えると、台風そのものが来る前に風向きが変わり、虫の動きが変わり、空の色が変わる──そうした「前兆」を読めるかどうかが、被害を最小化できるかを分けます。販売店レベルの販促体制の変化は、塗料業界における「前兆」に相当します。

★Y5: 25年で見た販促中止の意味(横井さん追記予定:過去25年で販売店の販促体制がここまで崩れた記憶はあるか・今回の規模感の評価)

値上げ・供給制約を踏まえて「2026年に外壁塗装をやるべきか・1〜2年待つべきか」の判断軸は、今やるべきか2026年の判断フローで整理しています。

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この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 25著書 3

愛知県丹羽郡扶桑町でヨコイ塗装を経営。施工歴25年・250件超の施工実績を持つ外壁塗装の専門家。著書3冊(外壁塗装の品質公式・外壁塗装の不都合な真実・外壁塗装 工程別チェックポイント21)。独自理論「塗装方程式」の提唱者。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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